週刊小説風
"いやーほんま助かったわぁ。でもさすがに悪いことしたかぁ。あとで返さんとあかんな。外回り終わったら返しいこ。" この関西訛りの若い男はずっと相手もなしに報告を続ける。USB入りの私の重要性も大して理解せずこいつは大丈夫なのか。話すすべてがまるで"…
"あれ、ペンチとかどうしたん?なんかあった?" "あ、うん。ちょっとね。" "どしたん?俺やろうか?" "あ、もう大丈夫。この、この傘直してたの。" "へー。こんなビニール傘持ってたっけ?" "うん、持ってたよ。" "でもわざわざビニール傘なおすなんてどうし…
奇妙な男二人組がアパートから出て行って30分くらい経ったのだろうか。埃と砂にまみれた玄関は居心地がよろしくない。私が立てかけられた安っぽい靴箱は薄黒くなっている。たぶんもとは白だったんだろう、中古か何かをやすーくもらったのだろう。部屋はカッ…
開店前のラーメン屋の傘入れに投げられて数分後。ようやく太陽が昇るのかどうかといったころ。 スーツの男がスッと私を持ち上げた。どうもラーメン屋の大将ではなさそうだし、なによりもうラーメン屋から数十歩離れてしまった。拾われてしまった。今度はそれ…
結局バスで置いていかれた私は、バス倉庫まで乗ることになった。 バスを掃除しながら運転手のおじさんが私を見つけ、運転手の休憩所とでも言えばいいのだろうか、小さい掘っ建て小屋に連行された。 "今日は傘ひとつでしたぁ。" "おや!松田さんおつかれよぅ…
お嬢さんに置いてかれてから何日経ったろう。雨は降ってないけど、相変わらずはっきりしない。春一番も吹いてくれない今の時期、川沿いの公園は日が暮れると寒くなる。まあ傘にはそんなもんわかりませんけどね。 今日もまた、このまま次の太陽を待つことにな…
待つっていうのはなかなかしんどい。だけどこれも仕事のうち。雨が降ってくんなきゃずうっと端っこにいるだけ。同業者もなし。前は2,3本いたんだけど、帰ってこなかった。アパートの玄関口にひとり。寒いし暗いし。ひとりってのはつらいもんだね。話し相手も…