〈122.ノーワックス芋ジャージ〉

引っ越し準備の最中なのだ。明日、というか今日の朝9時に業者が来て持って行く予定になっている。だが、いつもの無計画が祟って前日1日潰し、深夜決行で段ボール詰めとゴミ出しを行うのだ。

高校までは違った。期限が決まれば、そこに標準を合わせ自己最高級、できる限りの努力を尽くした。大学一年生の時の成績を見ればそれがすぐにわかる。自分で言うのもなんだが、完璧主義だった。

大学2年生になり、いわゆるナカダルミっていうものを患ってしまった。一年間欠席なしだった授業もちらほら席を空けるようになり、テストも付け焼刃で戦う羽目になった。

そう考えると、僕は愚かになったと思う。大学の成績もいわゆる主席クラスのエリート君から底辺クラスのサボリーヌちゃんになった。

僕は真面目さや頑固さを墓地に送る代わりに柔軟さと不真面目さを手に入れることができたのだ。平日の昼間からコンビニに立つことによって海外に遊びに行く計画を立てられるようになり、授業中に卒論を書くという不真面目な行為を働くようになった。

社会正義で言えば僕は道を外れた。七三分けのおぼっちゃまからノーワックス芋ジャージになった。そのかわり視野が広がって、生きる世界が広がった。

僕は間違いなく今の方が幸せであり、不幸である。知らなければきっといまでも七三分けだったろう。しかし今の友人達とは馬が合わないだろうし、まさか親の脛しゃぶりっぱなしで大学院に行かせてもらうなんてことはしなかったろう。

ここまで読んで、眉をひそめる人がいるだろう。だが、残念ながら僕の人生なのだ。眉をひそめていただいても、当の本人が反省していない、むしろ両腕広げて堪能しているのでどうしようもない。

だから段ボールを片目にとどめつつ、ベッドでゴロゴロしちゃうのです。残り8時間で引っ越しだ。さすがに詰め始めるか。このお部屋にもお世話になったな。ありがとう。