ホウチガブログ

~方向性の違いでブログ始めることになりました。~

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〈164.穴が空いたみたいに〉

震災の話をしようと思った。

でも僕にはまだその力がない。勇気がない。決意がない。

 

あの日を境に色々な人が人生を選択したのだろう。身分を隠してトラックを運転した芸能人。現場に行き復興に尽くした学生。巨額の資金を調達した社長。目に耳に入る情報はどれも素晴らしく、希望を感じた。

 

だが。僕の人生は変わらなかった。当時中学2年の僕は、当然ながらお金もない。ボランティアに行くという選択肢が頭に用意されてない。

そしてなにより、身近でなかった。遠くのところの話だった。ニュースを見ている間も僕はなにか頭に入ってこない。少しでも早く復興してほしい、自衛隊さん頑張ってくれ。心の底から願った。しかし僕自身はなにも行動を起こさなかった。

 

それはたぶん、遠くの国で貧しい子がいます、あなたのお金で救える命があります、と街頭で訴える若い人をそっと避けるのと同じかもしれない。関わらなければ、僕は辛い思いをしなくて済む。知らなくて済む。

 

だんまりを決め込んでいた中学3年生の春。部活の後輩に転校生が入ってきた。東北からだった。他の部員は関係なく新しい部員を歓迎した。もちろん僕も歓迎した。

ただ、動揺していた。僕がなんとかしてこの子を助けなければ。なにかできることはあるだろうか。

他の後輩より気にかけ、多く話しかけた。隙があれば寄り添おうとした。

 

数週間後。彼は部に来なくなった。聞いた理由では、部活をするだけの余裕がないとか、転校したとか。残ったのは、結局なにも彼の支えになれなかったという虚しさだった。基本的に顔を覚えられない私だが、彼の顔はよく覚えている。真顔だった。時折見せる笑顔はすぐに消え、やっぱり真顔だった。

 

何をすればよかったのか。いや、しすぎたのか。笑顔にできなくとも、彼の小さな助けの一つにはなれたんじゃないか。どうすれば。

 

ついに私も、世間的には学生の身分が終わり、自分の体は自分で支えなければならない時間がきた。学生を延長するものの、その認識を持たなければならない。

社会的責任、社会貢献。いつまでもだんまりを決め込むことはできない。

なにか僕の仕事があるはずだ。僕にしかできない、なんて仕事はきっとないだろう。僕が選択して、それを僕の仕事にするのだ。

 

やっぱり笑顔であってほしい。