さっきまで補助椅子を出して座ってたのに、今はわざわざ立って乗っている。そうか。隣の人が無理やり補助椅子を出したから、彼は座らざるを得なかったけど、本当は座りたくない人なのか。立ち乗り派の私もその気持ちはわかるぞ。
おや、隣の女性は手を動かしてみて、筋肉やら筋やらを確認しながらプリントを読んでいる。試験が近いのだろうか。こんな狭い電車の中でも熱心だなあ。頑張ってください。
まあどうでもいいや。別の人生だったらあなたとは友人になれる気がする。
この世界ではそういうことだったのだ。そういう運命なのだ。
だけども、この世界でもあなたと仲良くなる方法がもちろんある。
声をかける。
たった一言でいいだろう。
"最近寒いですね"でも"整体のお勉強なさってるんですか"でも。
運命はいくらでも変えられる。
人生のレバーを握っている感覚を掴めれば変えられるんだろう。
だけども、僕はその必要を感じてないから声をかけない。仲良くもならない。運命という言葉で片付けることにする。
そして、いま話をしてくれる仲良くしてくれる人を大事にする。そういう運命なんだから。
こんな俺みたいな人に注意をかけてくれるのなら、最大限できることをしようかしら。そういう人生なんだから。
運命って便利な言葉よね。鋭利な刃物みたい。