ワダツミの大きな手に飲み込まれる
今日はハラミキと幼馴染の1人と海に行った。
夜の海。恐ろしく黒い波が防波堤に打ちつけている
ゴウゴウ、ザバザバ、シャフシャフ
穏やかに見える海はもうこれ以上来るなよ、と半ギレで囁くように脅している。勘弁勘弁
ふと顔を上げ遠くを見ると水平線の先には空との境界線がまるでない。どこまでが海なのかわからない
とたんに足に力が入らなくなる
ボウっと見える町の光の、もっともっと遠い暗闇の奥にとても大きな誰かがいるような、そんな気がしてきたからだ
その大きな何かは、水平線を覆うくらいの大きな手をこちらに広げて暗い海の底に僕らの足を掴んで引きずりこもうとしている
恐怖に耐えきれなくなって後ろを振り向くと、談笑している友人らがいた
途端にバカらしくなってもう一度暗い海を見ると、もうそこには跡形もなくなってしまった暗闇があるだけだ
そうして、くるっと踵を返して話に加わるのだ。