〈333.Dark Dream〉
また悪夢を見た。
今回は、この前みたいな殺人とかそういう物騒な話じゃなくて、もっとリアルでネチネチしたどんよりして真っ暗な話だった。
大学のサークルで仲のいい後輩が二人ほどいる。一人は今でも連絡を取ったり飯に行ったりすることもある。もう一人は疎遠になってしまったが、もう一人の方から近況を聞かせてもらって、将来が決まったことで胸をなでおろしている。
僕は良い先輩ではなかったけど、彼らは良い後輩だった。むしろお世話になった。
そんな彼らに裏切られたのが夢だった。いや、裏切られると言うのは間違っていたのかもしれないな。
事の成り行きは覚えてないのだが、後輩のうち飯に行く方のやつとまた行くことになった。いつも通りやっすい定食屋にいくと、彼は突然低い声で話してきた。
"お前さ、しんどいんだよな。少なくともおれはお前を信頼してなかったからな。どうよ仲良しごっこは。もう終わっていいか?"
いつもは敬語をやめろと言っても使うような真面目なやつだと思っていたのだが。
おれが呆然としたまま家に帰ると、車庫のところにもう一人の後輩ががにまたで座り込んでいた。こいつにも嫌われているのか不安になった。
なあ、元気、か?
恐る恐る尋ねる。
"うす"
おれ、やっぱダメなやつだったよな。
"うす"
あぁ、うん、ごめんな。
"うす"
彼が顔を上げることはなく、ずっと地面を見ていただけだった。
どうすればいいだろう!謝れば許してもらえるのか!
ああ!こんな私のための謝罪なんて欲しているわけがない!おれはなんてダメなやつなんだ!先輩としても、人間としても!すべてが嫌なやつだったんだ!
その瞬間目が覚めた。いつもとは違う環境で寝起きしているから変な夢を見たのだろうか。それとも彼らの本心はそうなのか。
今でも先輩としてくずだったなあと後ろめたい気持ちがあるのは事実だ。それが不安定と不安の混じり合いで夢として現れてしまった。
冷房はかけたままだったのに、汗びっしょりの目覚めだった。
悪夢をみるのは現実が好転するとか聞いたことがあるけども、それはやっぱり嘘なんじゃないかしら。心の中のぐるぐるした渦を押し込めて押し込めて、封印したと思ったやつが夢の中だと力を持って私を制圧してくる。
すると現実にも思い出させられ制圧されかかる。立ち向かうことでしか好転させることはできないけども。
やっぱ悪夢はしんどいよなぁ。
楽しい夢を見たいよ。