〈445.傲慢考〉
体調が良くない。
しかし、バイトを休むほど悪いわけでもない。
だが、あんまり外に長居するのはしんどい。
もともとの友人とのスケジュールをなしにしてもらって、ひたすら寝た。おかげで夕方のバイトにはなんとか行けるくらいにはなった。
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いつものバイト先とは違うところの応援に行くことになっていた。応援といっても旗を振り回したり、大声出したりする方じゃないわよ。でもセネガルいく前にちょこちょこ行ってたところなので顔なじみのはずである。
だが、知らん人だった。知らん女性と初めて入った。
その知らん人、見た目は大学1-2年。中身は高校1年生だとか。2003年生まれです、だそうだ。
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まあ色々と大変なことを抱えながら、とりあえずバイトしているそうだ。俺が何か出来ることはないか、なんてすぐ考えてしまう私はなんとも傲慢だ。そんな影響力僕は持ち合わせてないだろう。
それでも、なんかこう、この人の助けになりたいなあなんて思って、ちょこちょこと声をかけてしまった。
もちろん、たった数時間の会話じゃあなんにも人生変えられるわけないわよ。
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僕が高校1年生のとき。
そりゃあ無知の極みでしたわよ。自分の可能性を無限だと思い込んで、いまじゃあ思い出したくもない、ケツの青いことを宣っていらっしゃったよ。部活のことしかやってなかったくせにね!なんともまあ、ありがたい環境でした。
それに比べ、今日の子は大人びているというか、なんというか。
僕がクソガキだった歳に、もうお金のこととか、未来の安定とか考えていて。
高校生なんだから、もっとやりたいことやったほうがいいと思うんだけどねぇ。そうもいかないんだろうな。
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もちろん、バイトを高校生でするってのは良い社会経験だと思う。コンビニならなおさら、社会のいろんな人たちを見ることができるし、バイト仲間にもいろんな人たちを見ることができる。
半年くらいだったら、インターンシップ的に働いてもいいと思う。
ただねぇ。成人前の人に
"未来は明るくないっす"
なんて言って欲しくはないわよね。
まだ16歳の女の子。僕もまだまだ若いけども、もっといろんなことができる年齢でしょうに。その可能性を環境とそしてそこからの自分の思考が、どんどん狭めていってしまうんじゃないかと思って。
よく知らない女の子相手に悲しく思っていた次第です。傲慢にも。
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あいや待たれい。
俺がさっき言っていた、「可能性」って言葉はなにを意味するんだ?
未来の選択肢の幅、と言い直したとして、幅が広けりゃいいのか?
当の本人が幸せだと思うならそれもまた良い選択肢なんじゃないか?幸せの幅を広げるとかいうのはそれこそ自分が神様かなにかと勘違いしているスーパー傲慢マンなんじゃないか?
だって16歳だよ。
人によっては成人と大して変わらないメンタリティを持ってたりもするよ。俺はクソガキだったけども。
なにが取っても良い反応なのか、わからなくなったよ。
ただ、十文字という男はそういう後輩の姿を見ると不憫に思う特性があるという事実はよくわかった。
これが傲慢なのか、はたまたあっても良い反応なのか。ちょっと慎重に考えたいです。