ホウチガブログ

~方向性の違いでブログ始めることになりました。~

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〈494.試合は楽しいのか〉

バガボンドを読んでいると、どうしても嫉妬心が出てくる。宮本武蔵に対して。

もちろん彼がしていることは命のやり取りであり、決してテニスの試合とは同じではない。

しかし、一つの道を極める男とその道のなかばで燃え尽きた僕は、ある意味道を歩むということは共通なんじゃないかと思ったりする。

 

恥ずかしながら、僕がテニスを現役でやっていたころは県大会レベルでは安定してベスト4だった。しかし関東大会に出たら初戦負け、よくて全国決めまで行くけども必ず負けた。

なにかが圧倒的に足りなかったんだろうな。そう思って消化不良を起こし続けていた。

 

バガボンドを読んでいると、その消化不良が少し動き出すような、でも答えはわからないような。そんな感覚があった。

 

それが昨日、医者サマの卵君と試合をした時にその答えを垣間見たような気がした。

 

テニスって楽しいんだ。

その境地が求めてた答えだと思う。

 

 

昔、女子テニスで将来有望の若い選手の密着ドキュメンタリーの番組を見ていた。その内容は全く覚えてないんだけども、唯一その選手が酷い負け方をした時のコーチの怒り方が不思議で覚えている。

「お前は試合前に勝たなきゃいけないって言ってたけど、そんな試合は存在しない。その試合でどんだけ持てる力を出すか、それだけに集中すればいい。勝つか負けるかはその先にあるものだ。いいプレーをして、そしたらたまたま勝った、試合はそういうものだ。」

 

言葉として理解できても、内容は理解できない、ストンと落ちてこない言葉だった。

だってさ、試合は勝つためにするんじゃないの。勝ちたいじゃん。負けたくないじゃん。

 

 

現役から退いて、趣味でテニスをしているけども試合を始めたら負けたくなんかない。勝ちたい。勝つ快楽を知ってしまったから。

 

しかしだ。医者サマとの試合中にふと、試合が楽しくて仕方なくなった。勝ちたいとかじゃなくて、もっと良いプレーをしたい。もっと良い球を打ちたい。そして相手にもっと良いプレーをしてほしい。そしてその医者サマと楽しい試合をしたい。お互い全力の全力、本気の本気でぶつかりたい。

心底そう思った。

 

 

これを知るためには、プレッシャーをなくす必要がある。勝ってランキングを上げる、勝って次の大きい大会に出る。そういう全ての欲求をなくし、ただ純粋にテニスを楽しむことだけを求めなくちゃいけない。

 

そういや、僕は現役でも何度かこういうモードに入ったことがあったな。

それは決勝戦だったと思う。ほぼ同レベルの選手で、周りの評価で言えば4:6くらいで相手の方が勝つだろうと思われてたと思う。

 

試合の途中、僕はそれまでで一番良いプレーをした。全力で打った球がすべて入る。エースになる。こんな気持ちがいいことはない。

もっと速く打ちたい。もっと強く打ちたい。

そのときの記憶はほぼない。純粋にテニスが楽しくて仕方なかったと思う。

 

 

難しいのは相手を圧倒した時にチラと欲が現れる。

こいつに勝ったら俺は英雄じゃねえか?このポイントは絶対取りたいな。

そしたらプレーが崩れ始める。難しい。

 

しかしだな、もう一つ不思議な経験がある。僕には幼い頃からのライバルがいた。そいつはセンスもあるし、運動神経もバツグンだ。地元のコーチの評価だとそいつは全国に通用するとか小さいころは言われてた。

でもなんでかわからないけど直接対決で勝ってしまった。チヤホヤされたものだ。

その後、高校の団体戦で当たった。高校の名前を背負ってるんだから負けるわけにはいかない。そういう時に限って、僕は負けるんだ。

悔しくて仕方なかった。いや、悔しいとかじゃない、怨みとか怒りとかそういうところの怪物になった。

そして再び別の団体戦で彼と当たった。僕はほとんど覚えてない。しかしそのときは僕は怪物だったと思う。怒りとか怨みとかすべてぶつけて圧倒した。

 

これはどういう感情だったんだろうな。

楽しさがなくても、怒りとか怨みとかにら100%取り込まれたらそれはそれで強いんだろうか。

 

この1500字くらいのことはひとこと、集中力って言葉で片付けられるんだけど、その集中力っていうのが難しいんだ。

無限の集中力を得るためには前後関係が必要なんだ。

 

 

相手といいプレーをする。勝ち負けでなく。

ポイントではなく。

いいプレーをしないことは相手に失礼。

だから頑張る。

だから集中する。

すると楽しい。

 

難しい。