ホウチガブログ

~方向性の違いでブログ始めることになりました。~

MENU

〈561.陶器〉

いつもの茶碗の端がかけた。

普段の使いのクリーム色の陶器。6年くらい前にもらった。特別感情もない、日常。

 

そういや、となりのおじちゃんからもらったものだった。

端がかけてようやく日常から抜け出てきた。

 

 

端がかけたら隣の家に電話する。

「それなら新しいの作るから、今度取り来なね。」

記憶があるより前からいるおじちゃん。隣の家には陶器を焼く窯もあった。

 

端がかけたこいつをもらったのは、おじちゃんが亡くなったときだった。遺品整理してて貰い手がいなかった。せっかくなら。

 

 

故人のことをふとしたときに思い出す。

日常に溶け込んだ中にいる思い出。

午後の紅茶だって。隣の家に遊びに行くと必ず用意してくれていた。

抹茶が好きになったのも。ぼくがでっかいランドセルを背負ってころ、おじちゃんの陶器で点ててくれたのがおいしかったから。苦くて苦くて。大人になった気がした。

 

 

さびしい。

仕方ないんだけどね。

もう、次の陶器をつくってくれることはない。

 

 

宿題をすれば真面目なひとになる。試合で勝てば立派ひとになる。合格すれば優れたひとになる。

なんでそんなに褒めてくれたの。

おじちゃんみたいになりたいから、ぼくははやく歳をとりたいのに。

 

 

まだなんにもできてない。

おじちゃんはあんなにほめてくれたのに。

せめて期待に応えるくらいはしたいのに。

 

なんでこんなに難しいの。

こんなぼくを見てもおじちゃんはほめてくれるの。

 

ほめてほしいよ。

ちょっとくらい。

 

f:id:moji-village:20200412033152j:image