〈689.鎖〉
8月17日。
5年と半年が経った。
ガンジガラメに鎖を巻かれた時計が少しだけ緩んだと思う。もうその時計が時計としては機能しないけど、また別の時間を示してくれるようになるんじゃなかろうか。
。
罪の意識は、押し付けられることもあるけども、それを自分の中で正当化するのが大抵だ。こんなダメなことをする僕は、ダメな人間なんだ。そういう正当化をする。もちろん、社会に責任を押し付けて、自分の罪は自分が作ったものではない。そういう正当化の場合もあるだろう。
罪が発生すると、それが発生した原因を知りたい。それがなければ、というifを考えざるをえない。それさえなければ、罪を犯すことなく僕も幸せなまともな大人になれたんじゃないか。
いまの不幸を受け入れたくないんだ。受け入れたくないから、ifを夢見る。
もちろん、その原因が正当なものであればそれを正そうと努力できる。しかし、それを正すことができなければひねくれる。ひねくれて、常に後ろめたさを感じ、暗くなる。
。
そうやって、いつか鎖をかけた。鎖をかけて固定し、これ以上傷が深くならないようにいまの傷をそのままにした。でも、いつかは治すことを夢見る。だって痛いもの。
じゃあ傷を負ったらどうする?バンソコウ貼ってほっといてもいいだろう。でも傷口が深かったら?外科に行くのが普通だ。専門家に見てもらうと、それまでわからなかった傷の原因がわかることもあるし、原因が分からなくても対処する方法を教えてくれる。
するとあっという間に治る。そんな簡単なものだったのかと。第三者の専門家ほどありがたいものはない。
。
罪の意識も同じだ。それは君の自意識過剰だよと言われるとそれは粗治療だけど、落ち着いてそれは不可避だし、むしろ肯定的に捉えることもできるよと、そっと教えてくれる。それが一番の治療だと思う。
そしてなにより、それを教えてくれる人との関係性も大事だろうな。
専門家だと認める人。これは数少ない。そんな人に出会えることも滅多にないし、その人がそんな言葉を運んでくれることも滅多にない。
僕は運が良かった。
鎖はまだかかっているけども、その可動域が与えられた。ここからきっと風通しが良くなるはずだ。
ありがとう専門家さん。
。
戦闘力130日目
919(+7)
勉強+2
その他+5
ここを機会に自分の語りは少なくなってくれるんじゃないかと思う。鎖は解かれた!