ホウチガブログ

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〈999.腕時計と親父〉

6月22日

 

さいころに親父と風呂に入った時のこと。
いつも親父は腕時計をしており、大人の男は常に腕時計をするもんだと思っていた。風呂場にも時計をしていたので眼鏡同様体の一部のようなものだと認識していた。
そんな親父が湯船につかると腕時計を窓近くの小物をおけるスペースに置くのだ。
なんで外すのか疑問に思って聞く。
「家に帰ったら時間に縛られたくないのよ」
普段はそんな気の利いた言い回しをしない無粋な親父の、この日のこの言い方は20年くらい経ったであろう今でも覚えている。

 

 

腕時計というのはいつでも時間が確認できる便利なやつである。しかし、親父がいうように時間に縛られているが故に必要になったモノとも言える。
公務員の父親は確かに時間に縛られることが多いだろう。夜中にフラッと車で出かける癖がある親父は細かい計画通りに生活するのが苦手であろう。なんで公務員を選んだのか謎すぎるが、家庭のために犠牲にしているところがあるのかもしれない。
そんな親父の本心が見えた瞬間だったから覚えているのかもしれない。

 

 

いまだ学生身分であるが、一人前にも腕時計をさせてもらっている。高校入学の時に買ったG-Shockである。親父に似て道具の扱いが乱暴な僕には防水・耐久性に定評のあるこの子は生涯のパートナーになるだろう。
腕時計をすると「一人前の男」として気張ろうと思うのは、親父の腕時計を見てきたからかもしれない。
時間に縛られるというのは、社会や対人での拘束があるということだろう。それと自分自身の在り方のバランスが取れて一人前の男であるということかしら。今の時代だと一人前の男というより一人前の大人といったほうがいいか。

 

 

いまだに腕時計をすると「時間に縛られる」ということを考えさせられる。ラグジュアリー的な要素もある腕時計だけど、やっぱり社会で働く人間の大事な装備品なんだろう。


親父にならって、僕も仕事をするときは腕時計をし続けることになるだろう。そしていつかこどもと風呂に入った時に同じセリフをいうことになるのかもしれない。たぶん無意識のうちに。