ホウチガブログ

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〈1025.フルメタルジャケット〉

7月18日。

 

なんとも恐ろしい映画を見てしまった。
かの有名なハートマン軍曹が出てくる「フルメタルジャケット」。
ベトナム戦争における米軍の若者の話。
人が人を殺して良しとするのはどういうメンタリティなのか、とんでもなく恐ろしいものを見た気がする。

 

 

ベトナム戦争については現代社会で散々批判的に授業で教わって、かなりひどいモノだったとぼやっとした認識はある。
日本も戦争で散々な経験がある国で、だけど僕たちは大昔の出来事なような気がしてしまっている。
そして最近だとFPSゲームみたいな戦争のようなゲームも無料で遊べる。

結局物語の中の出来事としてしか「人殺し」はないし、あったとしても遠いところで起きた悲惨なニュースを伝えるキャスターが伝える程度だ。

もちろん「フルメタルジャケット」も結局は物語に過ぎないけども、映画の良さといえるかもしれない。なにかリアルに感じてしまう。
だからとてつもなく恐ろしかった。

 

 

作品は、訓練所での生活の前半と、ベトナム戦争の前線での戦いの後半に分けられる。
訓練所であのハートマン軍曹がやってきた若者を「殺人鬼」へと変化させていく。訓練所での罵倒や体罰で徐々に狂っていく若者。それに比べて…とかまったく考えられないくらいに恐ろしい訓練生活である。小さいコミュニティだからこそ発生する問題も出てくる。
そうして戦地に送り出される若者たちは、単純で狂暴な戦闘マシンに変化していく。

 

 

後半はその訓練所を卒業した青年ジョーカーを中心に描かれる。
ヘルメットには「生まれながらの殺人鬼」と書きながら、胸には平和を示すバッジを掲げている。
その矛盾を抱えた青年が戦地でどうなっていくのか。
そして明確には語られていない最後のシーンは、よーく考えると背筋も凍る恐ろしいことが表現される。
こうやって戦争は勃発して現地で戦う人の精神が堕ちていくのか。とんでもないものを見てしまった。

 

 

いろんな解説サイトを見てみると、この監督は「幼児退行」と「暴力」がよく描かれるテーマらしい。
確かに訓練所では、反抗が許されない徹底的な環境で抑圧されて、その結果、性的なところでしかはけ口がなくなる。それすら抑圧され、自由もなくなり、どんどん思考が単純になっていく。
まるで、親のいうことに従わされる未就学児みたいな雰囲気だ。

この「単純さ」といえる「ピュア」な精神が暴力すら肯定できる精神にするのかもしれない。
物事を単純化しすぎず、曖昧なままそれを受け入れることこそ大人としての理性なのかもしれない。
その微妙なバランス感覚を失うことが「幼児退行」なのだと思う。

 

 

僕は戦争の現場を知らないし、今後も知りたくない。
でもそこにおける「破壊衝動」「殺しの肯定」はなにか大事な人間としての生き方についての核があるような気がする。
こういう作品を描ける監督とか脚本家はどんな生き方をしてきたのだろうか。
それもまた恐ろしい。