ホウチガブログ

~方向性の違いでブログ始めることになりました。~

MENU

〈1073.王者のメダル〉

9月4日。

 

国枝選手がついに金メダルを取った。
最近の国枝選手は、以前では負けないようなラウンドで負けているというニュースを見ていたので完全復活という感じなのかしら。
今回の決勝は最初から最後まで全部見ていたけど、まったく寄せ付ける雰囲気のない圧勝だった。これぞ王者って感じで感動である。

 

 

相手のオランダのエフべリンク選手はめちゃめちゃパワータイプだった。車いすからのサーブなのに170キロくらいスピードが出ていた。健常者の僕が足も腰も腕も本気で振り回したのと同じくらいのスピードである。ラリー戦でも国枝選手からエースを奪うことがあり、急にスピードを上げてリズムを狂わせるようなイメージだった。車いすテニスはツーバウンドまで拾うことができるが、逆をついたスピードボールではまったく届かない。とてつもないパワー型だった。

 

それに対し国枝選手は、パワーではなく揺さぶりだった。車いすだからこそ、わざと高めのボールを打って取りにくくしたと思ったら、コースを狙った鋭いショット。相手の態勢が崩れることを予測して素早いネットプレー。滞りなく流れるようなプレーであった。
川に大きい石を投げ込んでいるような試合である。国枝選手の川はまったく途切れることがなく、ずっとうつくしく流れている。エフべリンク選手がガツンと大きな石を投げ込んだところで、ちょっと川の流れを変えれば元の流れである。

 

世界一位に君臨していたフェデラーのプレーはまさにそんなイメージである。相手がどんなプレーをしても、飄々と自分のペースに戻す。

テニスの王者は結局そこに行きつくということなのかしら。

 

 

特に感動したのは、ネットプレーである。
エフべリンク選手も何度かネットプレーを試みたが、ほとんどがネットミスだった。車いすならばそれも仕方ないだろう。ネットの高さと目線が同じくらいなので、常にすくいあげるようにしてボレーをしなくちゃいけない。ネットより高い打点で打つことができても、我々が立っているときより圧倒的に低い打点でボレーをしなくちゃいけない。チャンスボールでありながら、かなりリスクの高い選択になる。健常者のプロであってもミスは生まれるくらい、チャンスでありながらリスクのあるショットである。

 

しかし、国枝選手は記憶しているところではボレーミスが一本あったかなかったかである。かなり難しいショットでも完璧にこなしていたということだ。
そうではない。絶対にミスをしないくらい甘いボールを相手に打たせているということだ。言ってしまえば、小中学生でも決められるようなボールである。そこにいたるまでのボールの配置がとんでもないということだ。

 

例えば、最近の錦織選手のプレーはネットプレーを多く絡めている。特に彼の場合は意表を突いた場面でネットに出る。これはリスクがあるものの、結果的にはポイントをはやく終わらせることができ、体力の温存につながるという計算もあるらしい。
これができるのは、音をそれほどたてずに素早くネットに出ていけるスピードを瞬時に出すことができるからこそだ。

 

それがしにくい車いすの場合は意表をついてボレーにはつなげにくい。だからこそ、ネットプレーでのポイント取得率というのは、試合展開の上手さ、ボール配置の良さ、判断の的確さが露見するものと思われる。
つまり、国枝選手はとんでもないってことだ。

 

 

現在テニスは全米オープンというこれまた大きな大会が開催されている。
おそらく国枝選手はパラリンピック終了後すぐにアメリカへ発つだろう。おそらくアメリカでもトロフィーを掲げることになると思う。それまでに各選手がとんでもない分析をしてくるかもしれない。
引き続き国枝選手のプレーを見せていただくことにする。王のプレーが楽しみだ。