11月26日。
今日は良い油そばの日だった。
前々から油そばは食べていたけども、こんなうまいものは食ったことがない。
焼いた肉がわんさか乗っていて、それでいて麺はもっちりでしっかりしていて、スパイスが混じったすっきりしたオイルだった。
食べるところによって違う顔を出してきて、それでいてどこまでも上手い。
食べている間に余計なことが考えられない。目の前のいっぱいにのめりこむほかない。
この感覚は初恋のような、そんな気分であった。
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初恋の甘酸っぱい、とかそういう直接的な味覚の話じゃない。概念としての初恋である。
好きになってしまった人のことをいつもいつでも考えてしまう。授業中でも、掃除をしていても、風呂でも、ベッドの上でも。
その釘付けの感覚である。
そして話すたび、見かけるたび、人と話す様子を見るたび、新しい魅力が見つかっていく。どこまでも好きだったあの感覚。
そのどこまでも魅力たっぷりだった初恋相手のような、そんな気分にさせてくる油そばだった。
他の上手いラーメンはいくらでもあったし、これはうまいなあと唸ることはあった。
しかし、こんなに恋焦がれるような、不思議な気分にさせてくる麺は初めてだった。
うまく整理できない。
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確かに雑誌やそういうレースでは上位入賞していたり、優勝しているような名店であるにはそうらしい。
そしてそういう店はいくつか行ったことがある。確かに上手いけど、脳みそまで到達するようなことはなかった。
舌の上で感じて、ああおいしいですね、それで終わりだった。
だが、その油そばは脳みそまで侵食してきた。思考を停止させ、その一杯のことしか考えられなくなった。
バケモンである。
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肉てんこ盛りの、ちょっとおしゃれなオイルとパイナップルが乗った、風変わりな油そばだけども、その本質は薬物である。
この文章を書いているのは数日経っているのに、いまだに頭のすみっこに居続けている。
はやくだれかを連れていきたい。
喜びを分かち合いたいとともに、この感覚がバグっているんじゃないかという不安をぬぐいたい。
家から遠いのが難点である!
ああ!なんてことだ!語彙がほしい!