ホウチガブログ

~方向性の違いでブログ始めることになりました。~

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<キョードー企画>『荒野へ』を読む

 

こんにちは。だいちです

 

さて、一つ前のもんじゃの記事を見てもらえればわかると思うが今日は「好きな本」をそれぞれ紹介するというホウチガブログの共同企画である。

 

なぜこんなことを言い出したのか。端的に言うと共同ブログを共に書く他の2人に関心が湧いてきたからである。僕らは共同でブログを書いているせいもあって必ずと言ってもいいほど他の二人のブログに目を通す。一番の読者は我々であるのだ。読んでるうちにお前らはどんな奴なのかもっとひけらかしてみろよと言いたくなってくるのだ。だから一読者として彼らがどんな人物なのかを共同企画という名目で明らかにしてやろうという魂胆なのである。

 

本は人を写す鏡のようなものであると思っている。筆者に共感し、憧れ、拠り所となり、人生の指針となる。だからその人が読む本から人となりが分かるような気がするのだ。こんな堅いことをごちゃごちゃ言っているが今日は紹介する本に「へぇ~なるほどぉ」と関心を持ってくれるだけで幸いである。

 

さて早速だが紹介する本の話に移ろうと思う。紹介したいのは

 

ジョン・クラカワー著『荒野へ』(2007年) 

というノンフィクション作品。

 

この本を読んだときは衝撃を受けた。彼の最期とそれに至るまでのほんの少しの過ちは決して称賛されるべきではない。だが彼の生き様は文句がつけようのないくらい素晴らしいものだったと思う。世間を知らぬ若者なりに自分で考え、ぶつかり、また考え、己と向き合い続けた。自分もこうありたいと思える大切な本のひとつである。

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原版は1996年に出版

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2008年には映画化もされました

あらすじ
1992年アラスカの荒野で打ち捨てられたバスの中で死体が発見された。それは4ヵ月前ヒッチハイクでアラスカまでやってきて、荒野にひとり足を踏み入れたある青年のものであった。東海岸の裕福な家庭で育ったこの青年の名前はクリス・マッカンドレス。なぜこの青年は故郷を捨て荒野に魅せられたのか?なぜ彼は旅をしていたのか?なぜバスの中で死ぬことになったのか?筆者ジョン・クラカワーの綿密なインタビューからこの疑問が次第に明らかになっていく。

 

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こんなところで一週間も暮らせるのだろうか・・・

クリス・マッカンドレスという男

この物語の主人公はクリス・マッカンドレスという20代前半の青年である。クリスは大学卒業後貯金を慈善団体に寄付し、アパートも引き払い、家族には何も告げず、名前も捨て旅を始める。故郷のアメリカ東部から南下し、やがて西に、そしてアラスカを目指し北に向かう。彼は2年以上も放浪生活を続けたがその目的ははっきりしていたように思う。物質世界からの逃避。いや逃避というべきではないのかもしれない。彼は決して逃げていたわけではない。彼はそのような世界から極力遠ざかることで自分にとって最も重要なことを探し続けていたのである。本来の人間があるべき姿。その答えを探し求めていたのである。

 

好きなシーン

クリス・マッカンドレスは放浪生活を長いこと続けていた中でたくさんの人に出会い、そして彼の生き方や考え方は多くの人に影響を与えた。出会った中の一人にフランツという80歳の老人がいた。彼もクリスの生き方に影響を与えられた人物の一人である。彼がどう変わったのかはぜひ原作を見て欲しい。フランツは長年、孤独な生活をつづけてきた。家族はなく、友人もほとんどいない。クリスがたまたまヒッチハイクをしている時に2人は出会った。工房でのベルト作りに籠りがちなフランツをクリスは度々説教していたようである。クリスが別れた後、一人で暮らすフランツにあてた手紙の中のフレーズが好きなのである。

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『フランツ。あなたは思い切ってライフスタイルを変え、これまで考えても見なかったこと、あるいはなかなか踏ん切りがつかなかったことを大胆に始めてみるべきだ。多くの人々は恵まれない環境で暮らし、いまだに状況を自ら率先して変えようとしていません。彼らは安全で、画一的で、保守的な生活に慣らされているからです。それらは唯一無二の心の安らぎであるかのように見えるかもしれませんが、実際、安全な将来ほど男の冒険心に有害なものはないのです。』


この手紙の言い回しからクリスがいかに頭がキレるやつなのかがわかるだろう。それだけでなく抑えきれない情熱が噴き出しているのが伺える。この言葉こそマッカンドレスが旅を続ける思いなのである。この言葉はたかだか80歳の老人にあてられたものだが、読んでいる私にグサッと刺さるものがある。私にはこんな言葉も考え方もないのである。それこそ保守的な生活に慣らされているのかもしれない。

 

さいごに

この本は時系列も章ごとにバラバラであり決して物語として捉えるものではないのかもしれない。筆者が、そして彼に関わった人たちがクリスの生きざまを語るように描かれているのだ。加えて厳しくもあり壮大で美しいアラスカの描写。彼が魅せられたのも分かるような気がする。そしてクリスの敬虔な生き方もまた私を魅了し、敬意を示す他なかった。映画も素晴らしい作品となっているのでぜひ合わせて観て欲しい。

 

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