〈その46.優しくなりたい〉
実家から連絡があり、年末年始どうするか考えていた。
実家に帰ると必ず墓参りに行く。花を供えるけど、墓前に座り込んでじいちゃんに報告したり、相談したりもする。今年は帰れないかなあ。
今日はそんな憧れの祖父の話。
僕の祖父は、僕が生まれて間もない時に亡くなった。だから知らない。
祖父は学校の先生だった。特攻隊になったことを悔い、戦後は教育に尽力したいと考えたらしい。
小さい頃に町を歩くと、全く知らないお年寄りから、〇〇先生のお孫さん、と呼ばれていたものだ。タツキ、と呼ばれるようになったのは中学に上がってからじゃないかしら。ちょっと有名な先生だったらしい。
身内のことだから本当は遠慮すべきなんだろうが、彼の評判は悪いことがない。もちろん、孫に対してだからだろうけども。ただ、道行く知らない人からも、先生のお孫さんなら立派な人になるに違いない、そう言われ続けた幼少期だった。
部活の結果で名前を新聞に載せてもらった時も、先生のお孫さんは立派だ、という褒められ方だった。
どんなにすごい人なのだろう。
直接話したこともない、あったことはあるんだろうが、記憶はない。ただ彼になりたい。彼を超えたい。
時代には珍しく、かなりジェントルマンだったらしい。奥さんである祖母に異常なほど尽くしていた。職場にも人当たりがよく、退職する時には〇〇先生が辞めるなら私も辞める、という同僚が複数人出たなんて話もある。嘘かどうかはわからないが、優しかったことは間違いないのだろう。
亡き祖父の遺志を継いで俺は勉強させてもらっている。だから俺も教育を志している。祖父を継ぎ、超えなければならない。そうありたい。
しかし、彼の人徳には到底及べない。
修行を積まねば。
じっちゃん、おらがんばるぞ。
優しいことが取り柄で、後世に名を残す生き方もあるようです。決して金と地位だけじゃない。手前味噌的な話になっちゃったけど、そういうことも生きるってのには大事なんだな。
でもこれについても生き方は色々。そしてその全てが尊ばれるべきなんでしょう。方向性が違うから面白い。ホウチガも生きる足跡としてなにか人生について残せるものがあるとイイナ。