〈その29.大事にしたいこと〉
今日は進学についての報告を親戚にした。
そのおじさんはもう70過ぎだが太って元気でしょっちゅう奥さん(おばちゃん)と旅行している。
生活に余裕を持てているのは若かりし頃にバリバリ働いていたとかなんとか。その後独立してそこそこのちっちゃいお店をやってたらしい。僕にとっては全て知らない昔だが。
そのおじさんはいつもニマニマ笑ってて、好きあらば僕の横腹を突いてくるような陽気なおじさんなのだ。
そんなおじさん。いつものようにニマニマ話を聞き、"そりゃめでてぇや"なんていいながらお祝いを用意してくれた。
そのあとはいつも通り地元の話を聞いたり僕の近況を話したり。
そんな中で一瞬彼の顔のニマニマが止まり、真面目な言葉をおっしゃった。
"金、金、って追っかける奴は大抵そんな金は握れねぇんだな。頑張って頑張ってとにかくやった奴が気づいたら後からもらえるんだな。
難しいんさね。でも頑張れば後からついてくんのが結果なんだな。
進学するのはすごい。いっぱい勉強して偉ぇ人になるんだな。でも社会に出たら実力だかんな。頑張るんだぞ。"
そう言ってニマニマした顔に戻って腹をポンと叩いてきた。
僕の前ではただの小太りなおじいさんだが、色々知っているのだろう。大事なことを聞いた気がする。
なにをどう頑張るかよりとにかくやってみろ。結果なんかどうにでもなるさ。人生なげぇんだから。
確かになあ。
あんまり豊かな家庭ではないけど、金の亡者にはならずに済んでいるのはこういう家系だからなのかな。古臭い考えもありだと思える。ホウチガでそんな思いを共有したい。