10月10日。
しばらく前に90°の壁をよじ登っているみたいなことを言った気がする。きついけど成長感があって楽しいと。それがまた昨日今日と来ている気がする。覚えることがたくさんあって大変だけども、仏語ウォロフ語ともに伸びているんじゃないかと思えてきて楽しくなる。
今日、長いことバスを待っていた。日本みたいに時刻表なんてないし、運転手の気分次第ですっ飛ばしたりちょこちょこ止まったりする。だからバス停で30分はまあ待つモンだ。しかし、それにも増して今日は遅かった。
そしたらとなりのセネガルの方が話しかけてきた。こういう場合、普通はフランス語を使ってくるけど、その人はウォロフ語だった。のちのちわかるがこの人はフランス語は使えないようだ。
話しかけてきた人は、同じ目的地だったから、最初はタクシーを折半しないかと持ちかけてきた。金がないからできないと、なんとか言うと、じゃあ別のところのバス停に行こうと言ってきた。丁寧にも連れて行ってくれた。
キツキツのバスに揺られ、いや、基本渋滞のダカールでは揺られもしない。ただ暑くて狭くて疲れるだけ。ようやく目的地に着くと話しかけてきた人が、やっぱり話しかけてきた。
"なにしてんの?どこからきた?仕事は?"
どうにかこうにか返事を返すことができた。でも60%もいってないかもしれない。中途半端な受け答えだ。それでもできるようになったのは嬉しい。
ようやくマシになってきたけど、ふと親父の言葉を思い出した。
"海外に行ったからってなにも偉いわけじゃあない。なにをしたのか、これが大事だ。留学したから偉いなんてもんは愚かでしかない。なにもわかってない、むしろ留学が邪魔になっている人はわんさかいる。なにをしてきたのか、どんなことを成し遂げてきたのか、必要なのはこの力だ。天狗にだけはなるなよ。"
大学2年のころだったと思う。アフリカ行きテェとか言いだした私に親父は言った。
アフリカ行ったというだけでふんぞりかえるのはやっぱりおかしいよな。金積めばだれでもできるでな。
場所とか環境とか、それこそ言葉なんてのは道具で、その道具でなにをしてきたのか。これを胸を張れるようにならなきゃな。
調子が良くなってきたときこそ、自戒を込めて。俺はまだ大学院生としてなーんにもしてないんだぞ。
成し遂げることが大事なんだ。
キツキツのバスの中で考えていた。