8月14日。
砂一粒のこの願い、どうか聞いてはくれないか。
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将来の夢の話。
高校や大学の同期は社会人2年目になっている。会社に入った人が大半。残りは今年社会人一年目であったり、医学部薬学部で勉強したり、あるいは僕みたいに大学院に行ったり。
おそらくみんな、小学校の卒業文集にはいろんな夢を書いたろう。サッカー選手、オリンピックで金メダル、漫画家などなど。キラキラ輝く未来を見ていた。僕もそのひとり。
そんな昔の夢はとうの昔に変わっている。
「普通」であることを恐れなくなった。「みんなの特別」にならずとも幸せになれると気づいている。気づいてなくてもそれで十分いいものだと知っている。
皮肉ではない。それが真実。宇宙の中の地球、140億年の歴史でいえば、たかがひとりの人生なんてほぼ意味をなさない。砂漠の一粒の砂と大差ない。
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同期の医学部のやつと話をした。
君はいったいなんのために医者になるんだい?
「医学部に入ったからね。」
そうか。それで生きていいんだ。それが生きるということか。
わからない未来を憂い、やりたいことを見つけられずに悩む。そんな考えたところで、ただの一粒の砂になにができるというんだ。
生きているから、生きていく。そうして幸せを見つけていく。それで十分だったのか。それが普通を恐れないということか。
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高校の頃、僕は世界平和のために生きることを志した。祖父みたいに、なんだか偉い人になりたい。
大学に入る直前、親友が死んだ。
大学に入って、ケニアの田舎に行った。
「貧困」の代名詞アフリカは想像してたほど「不幸」ではなかった。僕とおんなじように悲しむし、おんなじようにお腹が空いて、おんなじように笑う。ただの僕の妄想だった。
世界平和がそんな簡単じゃないことをようやく知る。それを僕ができるだろうか。そんな器はない。器にはひびがはいっていた。
ひびには、死んだ親友への後悔が埋め込まれている。
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普通のおじさんになることにした。ただの優しいおじさん。
優しいおじさんになって、死んだ彼の話をする。そこに教訓めいたことを入れるかどうかはわからない。ただ、彼が物語になって、物語として周りの人たちを笑顔にする。生前彼がしていたように。
それが彼への恩返しであり、僕ができる贖罪である。
同時に怖い。彼が僕の語りによって、別の彼に作り替えられてしまう気がする。僕は彼の生きた18年間を背負えるだろうか。背負っていいのか。
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そういうことじゃない。
背負い方のひとつとして、僕は物語を通して彼に生きてほしい。
「歴史にifはない」今日読んだ本に何度も出てきた。ifはない。事実彼はもういない。
でも、ifを語ることで歴史を知るための一歩にもなりうる。僕はそれをゲームを通して、小説を通して、漫画を通して知っている。だからこそ、「彼が生きていたら」「彼だったら」というifを物語ることで、彼を知る手がかりを残せる。
それなら僕はしたい。物語ることで、彼がしていたように周りの人を笑顔にする。それが僕なりの弔いなんじゃないか。
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平和の守護者っていう特別な存在よりも、二人の不幸者について物語ること。そういうただの優しいおじさんになりたい。立派な作家にも、立派なクリエイターにもなれなくていい。
でも、ちょっとお金は欲しい。おいしいものを食べたいね。
周りにいる人がちょっと優しい気持ちになって、ちょっといい時間を送ってくれる。それでいいんじゃないか。それがいいんじゃないか。
砂一粒のこの願い、どうか聞いてはくれないか。
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戦闘力127日目
897(+8)
勉強+4
その他+4
そうやってひびが埋まってようやく、誰かのために生きる自信を得られる気がする。