11月13日。
僕がいまいる村はセレールの人が多い。ウォロフ語とフランス語が共通語だけど、それとは違ってセレール語を話す。だから日常会話はわからない。ウォロフ語を学び始めたときとおんなじだ。
。
ところで白いネコのトロを知っているだろうか。ソニーが発売したゲームに出てくる、オスともメスとも言えない中性的な可愛いネコだ。
トロは人間になりたいので、人間の言葉を勉強している。プレイヤーはトロに言葉を覚えさせて少しずつ会話が豊かになる。
そういうゲームだ。
そのゲームでの遊び方の一つとしては、変な言葉を覚えさせて、めちゃくちゃな会話をすることがある。
"おでん"
トロ「おでんってなに?」
"スポーツ"
トロ「おでんはスポーツ。好き?」
"きらい"
トロ「おでんはつまらない。誰がする?」
"うえしま"
トロ「うえしまはおでんをする。でもつまらない。」
こういう感じだ。
トロからしたらだいぶ迷惑な話だ。コンビニに行って"おでん"が売ってるんだもの。ボールが売ってても野球は売ってないやな。概念が売り出されてたらパニックになるでな。俺はおでん芸好きだけどな。
。
僕がいま、まさにトロなのだ。
ディスータはおいしい?ネビはでかい?
ディスータはちょっとという意味であり、ネビは美味しいという意味らしい。
ちょっとという概念に味はあるのかわからないし。美味しいものはでかいかもしれないし、小さいかもしれないぞ。
毎度毎度、ちょっと困った顔をされたりする毎日だ。
拙いフランス語とウォロフ語を手探りに、セレール語をちょっと教えてもらう。
。
小学校の時、クラスに海外の子がいたな。彼は一生懸命日本語を覚えようとしていた。なぜこの単語がわからないのか、時制がおかしくなるのか、当時はそれを理解できずあんまり会話しなかったな。
いまになってようやくその時の彼の気持ちがわかるよ。
。
会話ができないってのは心によくないよな。もし海外の人が日本語話したがっていたら、いまなら優しくなれる気がする。そういう優しい奴が必要なのよ。人と人の関わりにならないかもしれない。ただ、日本語を話す相手として扱われるかもしれない。それも必要な役割かもしれない。
トロを辛抱強く助けてあげて、話せるようになったらきっと心の友になれるのさ。
光源氏の話だっけ。ねびまさりゆき、みたいな古語を使った話があったな。そう。そんな感じよ。たぶん。知らんけども。