〈1197.雪の日のこと〉
1月6日。
雪が降っている。
バイト先ではお客さんが減って、電車も動かなくなるんじゃないかとかで白い溜息である。
僕は外で降る雪も見えないくらいに部屋の中での仕事だったので、そういう話を聞きながら初雪を見るのが楽しみで仕方なかった。
雪で心躍るのは、雪の恐ろしさを知らない平和な人間だからこそだろう。
しかしまあ踊るもんは踊るんだもの仕方ないじゃないか。
外に出るころには雪が積もっていて、夜の寒さで氷になってしまっているところもある。
スキップはできないけども、いつもはそれほど起動しないカメラを一人でパシャパシャと楽しんでいた。
。
しかしまあ、靴下まで濡れてくると時効である。
楽しさはなくなり、寒さと不快感だけが残る。氷の上を歩く一歩一歩力を入れてゆっくり進むのも不便差しかない。
暖かい電車の中では靴下のぐっしょり感が湿気に変わってより不快である。
まったくもうなにが楽しくて白い積もったところをわざわざ踏みしめていたのだろうか。
なあにがパイオニア精神で踏んだろーだよ。寒くてじめっとしてかなわんわ。
。
犬はよろこび庭駆け回るような時代でもなくなったでしょうに。
ちょうど、雪を見て家に引き返す日本犬の動画がTwitterがまわってきた。
散歩行く恰好をしたけども、少しばかり雪を眺めると、すごすごと飼い主を外に残して一人玄関に帰っていく。
見慣れないものを見れて好奇心が満たされたら、求めるのは暖かさとくつろぎである。
犬も僕も大差ねえやな。
仕方ないじゃない。雪だって結局ただの水だもの。
白いからなんかきれいに見えるけど、とけりゃあただの液体だもの。
なにがロマンチックだよな。ただの寒さの象徴だでな。
。
愚痴っぽくなってしまったけど、雪が降ってちょっとうれしいこともある。
寒くて凍った道を手に息を吹きかけながらよちよちと急ぐと、玄関の前に小さい雪だるまのカップルがちょこんと待っていてくれた。
住んでいるアパートのどっかの住民が作っていたらしい。上の階に住んでいる子供だろうか。
雪だるまを見るのも久しぶりだけど、それを作っている無邪気な様子を想像すると、ちょっと暖かくなる。
家に着くと、雪だったからということでおでんが待っていてくれた。
雪の寒さもまあ悪くはないか。
ぐちゃぐちゃになって脱ぎにくくなった靴下を洗濯機に投げ込んで、おでんの鍋を前にちょっとそう思ったりもする。