4月3日。
今日は昼の退勤だった。
平日昼間の群馬行きの電車でも、それなりに人は乗っている。すかすかの電車じゃなくてよかった。
午前の仕事はストレスだったのかもしれない。気がつけばまわりの人は反対側に一人いるだけ、最寄駅に着いていた。
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妹はいつものところで横になっていた。
獣医からはもう家で過ごしたほうがよいと言われていた。
それからちょうど1ヶ月経とうかとしていたところだ。
相棒の柴犬が逝ってからまだ半年経たずだ。それほど仲良しだった弟妹ではなかったけれど、やっぱり寂しかったのだろうか。
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妹は公園のダンボールにいた、と思う。親父がナイターで地域の人とテニスをしていたら見つけられた。
そしてその晩には我が家に迎え入れられた。
その時は両手ですっぽり包めるようなお人形だったのに、半年くらいで10kgは超えた。
君は甘えていたんだろうが、猛牛の突進を思わせる力強さだった。最大15,6kgくらいだったろう?兄の飯を横取りしすぎなのよ。
僕が実家にたまに帰ってきても、特別喜ぶ様子もない無愛想さは覚えているぞ。そのくせおやつの袋をガサガサやると飛びかかってくる。
まったくもって分かりやすかったさ。
不満があると、庭から部屋のガラスをガンガン叩いてアピールするし、雷が来ればその巨体で股下に潜ってくるし、いくつになっても子供みたいだったな。
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桜が散って、さあこれからという時にこれだもの。相変わらずワガママな君だ。
病気はきっと苦しかったろう。どうか安らかに眠っておくれ。
兄貴は社会人2年目になったよ。
君に会わなくなってから8年経ったけど、中身は大して変わらんよ。
しっかりした番犬だった兄と比べて、肝心な時にビビり散らした君。やっぱり僕に似ていたと思うんだ。
捨てられていた君を拾ったのが、ウチで幸せだったかい。
目立つような幸せはなかったけれど、君がいた日常はきっと数段明るくなっていたよ。
ありがとう。
せめてそっちでは、兄と仲良くしてくれな。