〈その48.漢顔眠〉
小学3年生の時の担任の先生だ。
給食の後の歯磨きの時間に決まって流すBGMがあった。ケロロ軍曹のケロッとマーチ。
その影響もあってか、小学校高学年になりケロロ軍曹を買ってもらった。小学生も笑って読めるギャグ漫画だ。当時は理解できないネタが豊富にあるから今でも引っ張り出して読んでいる。
時々ふと思い出すシーンがいくつかある。そのうちの一つ。
ケロロの部下にタママという童顔の凶暴になるキャラクターがいる。
ある作戦で、タママが人間達にはバレないように地球侵略のために暗々裏に働いていた。その夜、タママがベッドに入るが、タママの主人(?)の女の子がその顔を見て、後日友人に報告をする。
「最近タマちゃんは寝るときに、やりきった漢の顔をして寝ているの」
その時のタママの顔は童顔なはずなのに、むさ苦しい漢になっているのだ。最初見た時はヒャヒャヒャ、と小さく笑った。
しかし、2回3回と読み返すたびに別の感情が沸き起こる。
やりきった漢の顔で寝る、ってどういうことだ?
夜が嫌いで寝付きの悪い少年は、そのやりきった漢の顔で眠りにつく気持ちになることがない。わからない。
時は流れ、部活を引退し受験真っ盛りの高校3年の秋。居間でうつらうつらとしていると母親に怒られた。
「寝る時くらい計算するのはやめなさい!」
どうやら夢で数学を解き、答えを発表したらしい。
受験に限らず、なにか壁と戦っている時を思い出すと誰でもよくやったなあと思うだろう。
そういう戦っているような時期の、布団に入っている時のことを思い出してみる。
ただファイティングポーズをとっているのではない。極限、メンタルも体も捧げて戦っている時。
おそらく寝る前はなにも考えられない。もしくは明日のスケジュールを確認していると勝手に寝る。
そんな時、きっと"やりきった漢の顔で寝る"のだろう。
ここ最近は心に余裕があるおかげ、いやそのせいでやりきった漢の顔で寝ていることがない。
おや、今日もまた28時になっちゃうよ。やることやってねぇなあ…。
今回で言うとこの、やりきった漢の顔で寝る、という一つの現象だが、こういう固有名称がないけど大抵の人が共感できるような現象が他にもある。固有名称があると共有しやすいんだけどな。
身の丈に合ってないことだが、今日のテーマに名付けよう。そうだな。安直だが、やり寝。
いやこれはちょっと、あれだな。アレだ。よくない。うーん。熟語にしよう。
漢顔眠(かんがんみん)。これならいいだろう。なげえかな…まいいや。
ホウチガ、もある意味そう。略語になる訳だが共通語ができたわけだ。こういう共通語は人間コミュニケーションで大事だと思うんだ。
みんなも漢顔眠しよう。