〈981.言葉の具体化〉
6月4日。
他の感情と同様に、かわいいと思う感情も色々と細かく分けられるはずだ。
赤ちゃんが可愛いのと、女優さんが可愛いのは違うし、キティちゃんが可愛いのも違う。プードルが可愛いのとアンガールズが可愛いのも違う。だからこそキモカワイイというジャンルができたんだと思うけど、そこだけじゃない。可愛いという形容詞はあまりにも広いだろう。
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同じようなことを面白いという言葉でも思う。もちろん興味深いという意味での面白いというのがお笑いの面白さと違うのは明確だろうけど、挑戦を面白いと思うのも変顔の面白さとは違う。
つまり、どんな形容詞もすべて人によって受け取り方が違うと考えられる。それはそうだ。名詞はモノを指すのでそれほど大きく違いは生まれないにせよ、形容詞はそのモノがどういう状態かを示すんだからさらに違いが出てくる。
これは大学での英語研究会で先輩からよく言われたことである。「形容詞とか副詞は使うな。」
英語研究会では決められた時間の中で聞き手の納得感を勝ち取り、心を揺さぶるという競技なのだ。そんな縛りがある中で形容詞を使うと人によってはクリーンヒットするけど全くかすりもしないような人も出てくる。なによりクリーンヒットしたとしてもパンチがない。日常会話をする分には問題ないけど相手の心を掴みたい時には形容詞とか副詞は避けるべきだ。
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「Aさんはとてもかわいい。」
会話なら別にいいかもしれない。でもそれをAさんに伝える時ならどうだ。嬉しいには変わりないけどもっと質の高い言葉を用いることも選択肢としてあると気が楽だろう。
そのときに「とても」「かわいい」これを変えるのだ。
「とても」は程度を表す。これを言い換える時は比較するのがいいだろう。なにか別のものと比較してそれより上とか、あるいは同等とか。
「Aさんは広瀬すずよりかわいい。」
急にかわいさのレベルが上がった。クラスの中で可愛いAさんが急に国民的レベルの可愛さになった。
「かわいい」はもちろん状態を示している。これは具体例とかその結果とかを言えるといいかもしれない。
「Aさんが鏡で身なりを整えているのは見ているだけで鼻血が出てくる。」
ちょっと変態じみてきたが、具体的にどんな時に自分はどんな気持ちになるのかを言葉にしてみると本気度がうかがえる。
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つまり、形容詞も副詞もきちんと誰でも理解できる言葉に変換することが大事だということ。もちろんそれによって言葉の鋭さが増すので良い言葉であればより嬉しくなるけど、悪い言葉であれば二度と抜けないトゲになるかもしれないのは肝に銘じなければならない。
気をつけようね。