〈1223.冬の畑〉
2月1日。
朝の小さな駅から、のんびり畑道を縫っていく。
石を蹴るしか楽しみがない。ほかになんにもない、畑と空の平坦な道。
左から学校のチャイムが聞こえる。右からも聞こえてきた。そこにあった家の壁から跳ね返ってきたんだね。畑しかないから。
8時15分からえらいもんだ。
ママチャリに乗った学生たちは急いでいる。
遅刻したらめんどくさいぞ。
横を抜いていった一台のワゴン車。小さくなるまでずっと見える。
ぽつんとちっちゃい森がある。森というか林。ウルトラマンのにぎり拳くらいの。
畑の中に墓場がある。そこらへんの家々の、ご先祖さま方だろうか。
その近くに神社もある。ながーく、腰のあたりがグネッと曲がった松もある。
ようやくさっきのワゴン車が、見えなくなった曲がり角についた。
狭いコンクリートの道路。車と車がすれ違えないのだろう、脇の土に深く掘られたタイヤの跡がある。そこだけちょっと湿っている。
川は凍りつき、そこに映る太陽が眩しい。スズメのようなちっちゃな鳥が川を歩いている。器用なもんだ。
そこに僕の影がはいりこむ。
ちっちゃな鳥はなにも変わらず細かく足を動かしている。
冬の畑はいいもんだ。
なんにもなくて、ずっと先までなんにもない。
これから仕事。
畑に囲まれた、ちっちゃな倉庫でひたすら道具を磨く。
タイムスリップしたみたい。