ホウチガブログ

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〈1278.最後の旅〜京都〜〉

3月28日。

 

大学時代の友人と最後の学生旅行をしている。
その友人は会社を辞めて、青年海外協力隊の隊員となり、まもなく外に行く。

そんな友人との出会いの場であり、それぞれの青春を過ごした大阪と京都。それを学生身分最後の目的地とした。

今日は当時ひたすらアホみたいにしていた長距離自転車の旅である。

 

 

京都の湯葉飯をちびりちびりやりながら、旅程を組んだ。なにを隠そう、私もそいつもプランニングをしないことを良しとする者である。
現地についてからどうしようかと、不真面目に考え始めた。
天気も悪くないし、夜行バスで思いのほか寝れたので自転車をすることになった。


しかしレンタサイクルは9時からである。今は7時30分。
いつもの倍の時間をかけて湯葉を食べ、私の住んでいた出町柳にゆっくり向かうことにした。



出町柳にはちょっと有名らしい和菓子屋がある。
友人も京都に来るたびになぜか食べていた。そんな思い出の饅頭でも食べてから自転車を借りるとしよう。
朝一番に20分並んで饅頭をそれぞれ2つ買う。そんな悠長な時間はあるのか。これから宇治まで行こうというのに。


出町柳から宇治まで自転車に乗ったことがない人が多数だと思うので、どんなものか説明する。
距離にして約20キロ。順調に自転車を漕ぐことができれば1時間から1時間半くらいでつく。そんな長旅ではない。
京都の街中を川に沿って走れば景観を楽しめる。途中で伏見稲荷大社に寄ってもよし、飲まなければ酒蔵に寄ってもよし。見どころたくさんの道である。
ただ、京都の道である。車も多いし、路駐は多いし、信号とか二車線とか色々複雑だったりする。見どころがたくさんだということは、それだけ時間を消費するということである。
そして20キロ自転車を舐めがちである。となりのスーパーにいくような気分ではじめたら地獄見るぞ。



天気にも恵まれ、順調に走って伏見大社、酒蔵エリアに止まる。予定なんかないので、気が済むまで散歩もする。
特に酒造のエリアはよかった。桜も満開であり、小川には小舟が走り、春の訪れを全身で浴びることができる。
おかげで昼飯食うのを忘れたくらいだ。朝買った饅頭をたべて、宇治に向かう。


宇治川も綺麗だった。土手をチャリで走るのがあんなに心地いいなんて。忘れていたよ。
ただ、僕は夜行バスで来た身である。少しずつ疲労に襲われているのは気づかないふりできなくなってくる。
どうせならということで、3年前だか4年前だかに入った有名お茶屋さんに入り、高級パフェやらセットを食べる。疲れた身に甘いもの入れてごらんよ。もう立ち上がれない。このままごろごろしていたい気分である。


そんな私のことなんて気にしていないのだろう。友人は、かつてより行ってみたい場所があるとしきりに主張してくる。最初は私も乗り気だったし、なんなら私のほうが自転車を乗り回すつもりだったが。
それはもう昔の話である。はやく河原町に戻って飯食って寝たかった。



友人おすすめの場所というのは黄檗にある萬福寺という中華雰囲気のある寺である。
詳しくはないが、江戸時代に中国の僧が開いたお寺らしい。
らーめんどんぶりに描かれるようなマークというか柵というか、それが実際にある。これは見たことのない、綺麗で雰囲気のある良いところだ。
カメラマンと和服をまとったモデルさんが複数団体写真を取っていた。観光客がいないのでのんびりできる。アクセスが悪いからだろう。清水寺とか伏見稲荷とはまた別の良さだ。

次回、京都に車で来たのなら間違いなく行くだろう。自転車で行く猛者がいれば立ち寄ることをおすすめします。


帰りに、随心院に寄った。友人とはおそらく3回目である。
毎度、春に来ている気がする。とにかく美しく、人がいない。竹林と梅と桜を楽しめる。
小野小町が過ごしたというお寺である。小町井戸という境内の端にひときわ静かな場所がある。
その井戸の水を小野小町は重宝していたそうな。いまは飲めるような状態ではないけれど、木に囲まれた場所に、ぽつんと水の上に浮かぶ葉を眺めるのは代えがたい良さがある。
寺の中を巡ったのは初めてであった。お庭はとても美しく、水の音、草木を揺らす風の音、静寂を楽しめる。
寺の裏には、文塚がある。小野小町に宛てられた恋文をそこに埋めたらしい。そこが鬱蒼としていて素晴らしい。
京都で一番好きな場所だ。



随心院から河原町まではそれはそれは絶望の道のりだった。急こう配なので自転車は押すしかないし、途中で車道のみになるので脇道にそれるしかないし、ようやく上り坂が終わったかと思って自転車にまたがれば、50m先からまた上り坂になる。
青春を共に過ごした親友とはいえ、会話がなくなる。生きて河原町に辿り着くのか、不安がよぎる。
なにより、プランなしのツケがまわってきた。自転車を返すまでに飯を食う時間があるのか定かでなくなってきた。

そんな状態で五条大橋の通りを見た時の救いはイエスの再来かと思ったぜ。
夕暮れに包まれた美しい京都の街を、時期外れの汗びっしょりな男二人が息も絶え絶え自転車を漕ぐ。なにが楽しくて最後の学生旅行でこんな思いをしなくちゃならんのだ。

 

 

そんな不満も、先斗町お好み焼きと生ビールでおさらばである。
いい気分になって、バーMoonWalkでちびちびカクテルをやり、趣のあるゲストハウスで眠りにつく。


これはこれで良い思い出である。
ただ、美しい随心院にいくのなら、車か電車かバスを使いましょう。ただそれだけだ。