ホウチガブログ

~方向性の違いでブログ始めることになりました。~

MENU

〈1394.読書感想文〉

8月13日。


ほぼ連日投稿といってもネタがないことには変わりない。
せっかくなので、夏休みだし読書感想文にしよう。



「啓蒙書を読んで」


啓蒙書というのは大抵うさんくさい。こうすれば幸せになれる、こうすれば仕事がうまくいく、などなど。
ともすれば怪しい宗教の経典と大差ない。
出版年が今年の啓蒙書は読む気にはなれない、肩書きがうさんくさい人のものは読む気になれない、などなど、読まない理由はいくらでも挙げられるが、逆にちょっと気になっていた本がある。
「人を動かす」というカーネギー氏の本である。
1936年に初版が出版されたらしい。それがいまでも読まれているというのはなかなか不思議である。
そこで今回、職場の上長におすすめされたので読んでいる。


結論から申すと、すべての啓蒙書の原典である。10冊くらい他の啓蒙書も読んだことあるが、言っていることはカーネギー氏の主張と同じである。「人に優しくあれ」。そこについて非常に例示を多く詰め込んだのが本書である。


1920年代から50年代まで活動された方で、作家や教師、対人スキルのコース開発者らしい。
本文中に出てくる様々な例示は友人・知人の例示が多く、またリンカーンルーズヴェルトなど歴代アメリカ大統領の行動についても言及するなど、博学であったことがうかがえる。
そんな例示もすべてカーネギー氏の主張の補強に使われるわけだが、その主張はいたって凡庸で「情けは人のためならず」である。情けをかけることは、めぐりめぐって自分のためになる、という話である。


セールスマンで自分の持っている商品を売りたいときは、商品の良さを訴えるより相手の悩みを聞くことにあるという例示がある。結局お客さんは、自分に最大の関心があり、相手がどうしたいのかについてはまったく関心がない。
だからこそ、悩みを聞き、お客さんを丁重に扱うことでお客さんは自尊心が保たれる。これがコミュニケーションを始める糸口になるわけだ。
そして、相手が興味を持つように話題を選択するなど、様々なテクニックが紹介されるが、すべては「相手ベース」であることに他ならない。
究極的に相手に寄り添うことが、相手を動かす唯一の方法である。


僕が大きな影響を受けた本としては、水野氏の「夢をかなえるゾウ」があるが、これも「人を動かす」同様、まわりを大事にすることが自分を大事にしてもらうことだという話を物語調でまとめたものである。
「人を動かす」は面白いことには面白いのだが、アメリカの20世紀の話題であるので理解できない例が多くて退屈に感じるところがある。
そう考えると、21世紀の日本人が書いた啓蒙書でも大差ないように思う。
なぜなら、結局「成功したい」と思うならば、「良い人になる」のが最大の近道であり、「良い人になる」ためには「他人に優しくある」ことが社会生活をするうえでは必須条件だからだ。その文言や例示に差こそあれど、どの「売れる」啓蒙書でもそこを触れてはいる。


気になるのは、そういうのとは違う角度の啓蒙書があることである。
例えば「嫌われる勇気」で扱われるアドラー心理学では、自分の幸せのためには他人と自分とを切り分けて考えることが根本にある。無理に自分の想像通りに進ませようと躍起にならないことが幸せになることだという教えである。
極端に言えば、カーネギー式が「相手のために」であれば、アドラー式は「自分のために」である。
どっちも正しい側面があって、人によって適する適さないというそれだけだと思う。
しかし、この相反する主張がどちらもメジャーになるのは非常に興味深く思う。
今後は啓蒙書を読むときに、自身がどうなりたいか、という視点ではなく、なぜこの本が人気なのか、そこにはどんな人の欲望があるのか、ここの視点から考えてみたいと思う。



読書感想文は以上。


先日、Twitterアドラー心理学は鬱には適さないという話があって不思議に思った。
どうやらアドラー心理学を自己責任論と捉えることでさらに悪化するらしい。
しかし、僕は「そういう世の中だから仕方ないね、自分のせいじゃないね、自分のできることをやればいいね」というようなマイペースな教えだと感じた。


しかし、こういう感じ方ができるのは、僕が健康な状態であり、鬱のような特定の状態ではないからこそだろうと思う。
今回のカーネギー氏の主張も、健康状態だからこそ、そうですかと軽く受け取れたわけだが、これがメンタルをやられているときに読むと違うように解釈ができるのだろう。


ということで、結局啓蒙書というのは、読み手のメンタル状況次第でどうとでも受け取られてしまうのだろう。
ありがたい教えというのも、教徒がいなければ経典にはならないし、全員が全員教徒になるわけでもない。
売れているから正しいというわけでもなく、自分がどうしたいのかについての壁打ち相手的な本を見つけられればそれでいいね。


結論:啓蒙書100冊読むより、親友一人作るほうがよっぽど価値があるよ。

 

 

次は8月16日予定です。